三鷹光器 中村義一

三鷹光器 中村さんは番組のディレクターが打ち合わせのファクスを送った時に、「私はね、中学校しか出ていないから、難しい字は読めないよ。大切なことは電話をしてくれ」と伝えていた。

 

 「日本の頭のいい人たちはね、勉強はできるかもしれないけれど知恵がない。子供の頃に遊んでいなかったからなんだろうね。たとえば三角関数とか、三角定理なんてもんは、ネズミが部屋の中を走り回るのを子供の頃から見て遊んでりゃあ、簡単に理解できる。ロケットに搭載するカメラも、エンジンの振動のことを考えなくちゃならないんだけど、子供の頃に橋の上で、飛び上がったり、走り回ったりしてれば、その振動だって理解できる。試験の問題はとけても、難しいことばかり考えるから現場で生かされない。NASAにいる人たちももちろん大学で専門分野の勉強をしてるんだけど、子供のときに友達と小さいロケットを作って飛ばしたりして遊んだ経験があるんですよ」

 

 「遊んでるといろんなことやりたくなる。そのときにやってみたかったこと、たとえばただロケットを飛ばしてもつまらないからカメラを積んで写真を撮ってみようとか、そのカメラを電波で制御してみたいとか思うわけ。すると、ロケットのことだけじゃなくて、カメラの勉強もするし、電気の勉強もする。で、自分がやってみたかったことを可能にするには、どうしたいいかって、知恵を必死に絞るようになるんだよ」

 

 「遊んだ経験があるから、機械の勉強も電気の勉強もレンズの勉強も、みんな必死でやる。そういう連中がNASAにはそろってる。知恵の絞り方をみんな知っている。だからヤツラは私と違って頭はいいけど、互いに理解し合えるんだよね。向いている方向が同じだから。英語なんかできなくても、不思議と通じるんだよ」

 

 技術者であり、経営者である中村さんは、次のような興味深い一言もおっしゃっていた。 「ものづくりと会社を経営することは一緒ですよ。作った品物とお金を交換するだけのこと。シンプルに考えればいい。金儲けばかり考えているとおかしくなる。周りの人は俺に、金儲けを考えないなんてバカだのなんだのいうけど、モノ売ってるんだから。作ったものがあって、それをお金に交換する。それだけのことなんだよ」

 

恐らく中村さんは、物事の本質を見失うとろくなことはないぞ、と言いたかったのだろう。